AFMカンチレバーの探針形状とその測定への影響
原子間力顕微鏡 (AFM) は、非常に高倍率のイメージングを可能にする測定技術です。他の技術とは異なり、AFM の分解能は光や電子の波長によって制限されません。 AFM は、目が不自由な方が指でなぞりながら点字を読むのと同様に、探針の先端が非常に鋭い カンチレバーを使用してサンプルの表面を機械的にスキャンします。
探針でサンプルをスキャンして得られる画像は探針の形状に大きく依存します。 AFMによるスキャンは、探針とサンプル表面の重ね合わせの結果となります。 AFM 探針の寸法と比較して表面が小さい特徴をもつサンプルほど、コンピューターの画面上に出力される画像の精度が低くなります。
走査結果のクオリティに影響を与える探針の最も重要な2つの要素は、探針先端の曲率半径と、探針側壁の角度です (図 1)。 探針の曲率半径は、AFM 測定で得られる最高分解能の限界であり、探針の側壁角は急斜面の正確なイメージングに影響します。
AFM 画像は実際の表面形状と比較するとどのように違うのでしょうか? 探針形状の違いによる主な影響を図 2で説明します。
摩擦摩耗によって カンチレバーの探針が徐々に丸くなると、上記の影響がますます顕著になります。 ある時点を過ぎると探針-サンプル表面間の接触面積が非常に大きくなり、細い特徴を捉えられず全体的に非常に似た形状や向きの画像を描くようになります。 (図 5、図 6)。 この形状は実際には、探針の頂点形状を 180 度回転させたもので、その形状は AFM チップのピラミッドの断面に依存します。
例えば、サンプルの表面とうまく接触できなかったなどの理由により、探針が破損した場合、それがサンプルの偽の特徴としてイメージングされる場合があります。
アーティファクトによる測定への影響はさらにシビアです。スキャン中にサンプル表面に接触する先端部が複数になってしまう場合(ダブルティップ等)、スキャン画像にはサンプルの特徴が重複しているような画像を生成します (図 9、図 10)
像の変形や実物と異なる像がイメージングされるなど、探針形状の影響を判定することは難しくありません。 スキャン画像に同一のパターンが繰り返しイメージングされるのがはっきりと認識できるからです。
その他の要因による影響は原因の特定が難しく、ユーザーがコンピューターの画面をざっと見ただけではすぐには影響の有無を判断することができません。したがって、ナノスケールの距離を測定したり、ナノスケールの特徴の形状を解釈したりするときは、測定結果を適切に評価する必要があります。
探針形状のAFM 測定への影響を知ることにより、AFM スキャンから有用な情報を抽出したり、やり直しが必要な測定かどうか理解することが可能です。
カンチレバー探針の形状とその 測定への影響を理解することは、AFMによる 解析を成功させるために不可欠です。
良好な AFM 測定結果を得るには、適切な AFM プローブを選択することが重要です。 カンチレバー探針の鋭さは、お使いの装置で達成しうる高分解能の度合いに直接関係します。
カンチレバーの探針が鈍くなったり破損することによって引き起こされる画像の歪みは、外部からの微粒子が 探針先端に付着し探針の先端と認識されたまま測定することで引き起こされることもあります。 多くの AFM 装置による測定は、クリーンルーム施設のない場所で行います。 作業スペース、プローブ、サンプルを清潔に保つことで粒子による探針の汚染が軽減され、AFM スキャンの品質が向上します。