AFM測定の基礎


原子間力顕微鏡 (AFM) は強力な測定技術です。 他の測定装置と同様に、AFM による測定技術を最大限に活用するには、オペレーターが原子間力顕微鏡の基本動作原理をよく知っている必要があります。 以下は、光学式 AFM カンチレバーのたわみ検出器を備えたシステムで AFM 測定を成功させるための最も重要な手順のショートリストです。
サンプル表面のスキャン

このリストは、AFM 測定を実行する方法の簡単かつ一般的な概要であることにご注意ください。 システムの操作マニュアルには、特定のシステムに関する詳細が記載されています。

測定サンプルの選択

圧電スキャナが許容する最大垂直方向の動きを確認してください。 スキャナの制限を超えない凹凸を持ったサンプルを測定します。 過度に高さのあるサンプルは、AFM探針、サンプル、さらには圧電スキャナの損傷につながる可能性があります。

AFM測定の基礎、ステップ1

AFM プローブを選択し、取り付ける

それぞれのアプリケーションに適した AFM プローブを選択してください。プローブは、探針の形状やカンチレバー(板ばね)、材質などで様々な種類があります。プローブをAFMヘッドに取り付けます。 取り付け手順は、お使いの AFM装置によって異なります。 この時、プローブの探針は、静電気放電 (ESD) による損傷を受けやすいことにご注意ください。 そのため、プローブの取り付けの際にはESD リストバンドを着用することをお勧めします。

AFM測定の基礎、ステップ2

レーザー光の位置合わせ

取り付けたAFM カンチレバーに、光学顕微鏡システムの焦点を合わせます。AFM装置から照射されるレーザー ビームを 、カンチレバーの背面に合わせます。カンチレバーで反射したビームが適切な信号を生成するよう、光学検出システムを調整します。フォトディテクタへ入射する反射光が最適になるよう位置合わせしてください。最適位置は各AFMシステムや、お使いになる測定モードによって異なります。一部システムのコンタクトモードでは、フォトディテクタに入射するレーザーの垂直位置は、カンチレバーの探針がサンプルに及ぼす力に直接関係します。 必ず各システムのユーザーマニュアルを確認してください。

AFM測定の基礎、ステップ3

カンチレバーの共振周波数を見つける(タッピングモードの場合)

タッピングまたはノンコンタクトモードを使用する場合は、ドライブ周波数を AFM カンチレバーの共振周波数と等しいか、もしくは、それに近い値に設定します。 まずはドライブ振幅を調整しましょう。 振幅が大きいほど、より高速で安定したスキャンが可能になりますが、探針の摩耗が激しくなり、サンプルへのダメージも増加します。 場合によっては、周波スイープで、複数の共振ピークが見られることがあります。 通常、最も高いピークがカンチレバー固有の共振周波数であり、それを使用します。 二次共振周波数は、一次共振周波数よりも低い周波数または高い周波数に現れる場合があります。

AFM測定の基礎、ステップ4

相互作用力の調整

タッピングモードを使用する場合は、振動減衰量を調整します。 この調整は、スキャニング中の振動振幅を自由振動振幅よりも減少させる為に行います。 コンタクトモードの場合はたわみ量を設定するセットポイントを調整します。 セットポイントは、スキャン中の AFM カンチレバーのたわみを定義します。 たわみと減衰設定によって、カンチレバーの探針とサンプル表面間の相互作用力が決まります。 減衰設定とたわみが大きいほど、安定したスキャンができますが、AFM探針の摩耗が激しくなり、サンプルへのダメージも大きくなります。

AFM測定の基礎、ステップ5

スキャンパラメータの最適化

スキャンサイズ、スキャンレートやフィードバック設定など、スキャンに関連するパラメータを設定します。スキャンサイズとスキャンレートの組み合わせにより、カンチレバー探針が表面をスキャンする速度が決まります。速度が速いとサンプル表面に対する探針の追従が不完全で、カンチレバー探針の摩耗が進む可能性があります。スキャン速度が遅いとスキャン時間が長くなりますが、探針の寿命が延びサンプル表面への追従性が向上します。フィードバック設定は、カンチレバー探針がサンプル表面を走査する方法にも影響します。フィードバックゲインが低すぎるとサンプル表面への追従が不正確になり、ゲインが高すぎるとフィードバック ループが不安定になります。一部のシステムでは、探針がサンプル表面に接触した直後にスキャンが自動的に開始されます。それ以外のシステムでは、オペレーターの設定後にスキャンが開始されます。後者の場合、スキャン パラメータの最適化は、次の手順エンゲージ(Engage)の後に実行できます。

AFM測定の基礎、ステップ6

AFMプローブのエンゲージ(Engage)

手動アプローチ: 一部システムでは、AFMプローブを、サンプルの表面から数ミリメートルの位置まで、オペレーターが手動で下げる必要があります。 他のシステムでは、探針とサンプル間の大まかな距離を推定するため、(サンプル表面に焦点を当てた)内蔵カメラを使用します。 いかなる場合でも、手動でのサンプルアプローチは、特に注意を払う必要があります。AFM プローブを下げすぎないように注意してください。 探針がサンプル表面に当たると、探針とサンプルの両方が損傷します。

自動アプローチ:エンゲージ(Engage)パラメータを設定し、探針をサンプル表面へ近づけます。標準的なデュアルピエゾスキャナー - ステッピングモーターとピエゾの組み合わせを使ったエンゲージでも、エンゲージのパラメータが適切に設定されていないと、AFM探針に悪影響を及ぼす可能性があります。使用可能なエンゲージパラメータの詳細については、システムの操作マニュアルを参照してください。

AFM測定の基礎、ステップ7

サンプル表面のスキャン

サンプル表面のスキャンを行い、画像を取得する。

サンプル表面のスキャンを行い

スキャンパラメータを適切に設定したとしても、カンチレバー探針の摩耗が起こることを忘れないでください。探針の摩耗は自然に起こることなのです!

探針の摩耗は避けられません。ある硬さをもつ材料で製造されている探針は、測定中常にサンプルの表面と相互作用しているためです。とはいえ、適切なスキャンパラメータを用いれば、探針の摩耗を大幅に抑えることができます。スキャンの進行状況を常に観察し、必要に応じてスキャンパラメータを修正することが非常に大切です。カンチレバーの探針を長持ちさせるため、長時間使用しない時は、探針をサンプル表面から離してください。

AFM測定の基礎、ステップ8

スキャン結果の分析

「百聞は一見に如かず」 このフレーズは、AFM 関連の講演でよく耳にします。 AFM ユーザーは、AFM 画像を正しく解釈し、探針とサンプル形状の重ね合わせ現象を理解し、測定に含まれる一般的なアーティファクトを認識することを学ばなければなりません。

AFM測定の基礎、ステップ9
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